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PC台数で言うと、200台程度の本社から、5台程度の営業所まで、
オフィス移転は何度かやりました。

特に大変だったのは、ひとり情シスで自分も含めた本社が動くときでした。
それまでのノウハウをすべてつぎ込んで効率化したのですが、せっかく稼いだ余裕に雑務を押し込まれたり・・・


どんな移転も大変ですが、会社や事業所のシステム全体を把握しなおす良い機会にはなります。

移転後は、少なくとも物理的に自分が知らないことはなくなります。

ひとり情シスの基本方針

「今あるものをちゃんと移設して、移設先でも同じ機能が使えるようにする」

これに限ります。

もちろん不要なものは捨てたほうが良いですが、
「これを機に」などと、新しいことには手を出さないに限ります。


新しいことに手を出すと、障害時に切り分けが難しくなります。
移設したせいなのか、新しいことをやったせいなのか、
どちらかわからないのです。

新しいことだとノウハウがありません。
業者は例のごとく逃げます。逃げるとは、傍観も含まれます。

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その気なら、移転までの間にその新しいことをやれたはずなのです。
それを何故移転という、大混乱が予想される中でわざわざリスクを負ってやるのか、ということです。

スケベ根性を出す輩にはそれをぶつけ、
どうしてもやりたいなら移転後にやると宣言します。
100点ではなく、80点を目指して良いのです。
非常時なので割り切りも必要なのです。

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以下にジャンルごとの作業項目を列記します。
なるべく時系列に並べたつもりですが、前後してしまいましたらご容赦を。

情シス関連の荷物

・不要なものを捨てる
・ボックスファイルにまとめる

これらは移転に関わらず、普段からやっておけば、他の部署を尻目にラクができます。

ボックスファイルは、ダンボールにそのまま入れられます。
サイズもぴったりです。
移転後に棚に戻すときもラクです。

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情シスは他部署の分まで面倒を見なければいけないので、
自部署のことはいくら早めにやっておいても、やりすぎということはありません。
日ごろから徹底的に整理整頓すべきです。

私は情シスの主たる仕事は、物理的・論理的な整理整頓だと思っています。
簡単そうに見えて、それを継続するのは大変なことです。


本社にいれば、
「家賃交渉が難航している」「場所を探している」など、移転の噂が流れてくると思います。
それを敏感に察知して、
廃棄できるもの(再リース物件を買取して廃棄するなども含む)は、先手を打っていきます。

移転対象物件を減らすのが、負担を減らす一番の方法なのです。

レイアウト

・レイアウトの決定を上に促す

移転では、経営者の鶴の一声で、レイアウトが大きく変わり、それに皆振り回されます。
老害です。

レイアウトが決まらないと、場所ごとに必要な電源・HUBのポート数などを出せません。
他にも進められないことがたくさんあります。

移転と言うと、ITに疎い経営者は祭り感覚です。
決めるべきことをいつまで経っても決めないバカもいます。

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昭和思想世代の「祭り」感覚


昭和思想世代は具体的な作業を何もしないので、移転も他人事なのです。
ITの担当役員でもその体たらくです。

物を動かしてハイ終わり、じゃないんだぞと脅す必要があるのです。

移設対象機器

・機器の種類ごとの台数を調べる
・機器の種類ごとに必要なアンペア数を調べる
・移設機器台帳を作る

移設物件の担当範囲は、情シスと総務で打ち合わせが必要ですが、
どちらがやるにせよ、移設業者は必ず機器ごとのボリュームが分かる資料を出せと言ってきます。


機器の種類は以下のようなものになると思います。

 サーバ、PC、サーバラック、HUBラック、複合機、ドットプリンタ、レーザープリンタ、インクジェットプリンタ、FAX、PBX、電話子機、シュレッダ


アンペア数も、コンセントやオフィス全体の電気回路数に影響し、業者から確認されます。
実物を見たり、マニュアルやネットで調べて確認しておきます。


このタイミングで、1台1台の台帳まで作っておいたほうが良いです。
後工程で移設先の確認をするので、どちらにせよ必要になります。

普段から台帳管理をしっかりしていれば、ここでラクができます。



・移設準備マニュアルの作成(PC・電話子機など)

移設時の解体・梱包・開梱をどのレベルまで業者に任せるかにもよりますが、
PCなどへの行先表示ラベルの貼り方、機器類の梱包の仕方、マウス・LANケーブルなどの付属品の扱い、チェックリストが必要になります。

私は以下のようなマニュアルを作り、配布しました。
移設準備マニュアル1
移設準備マニュアル2

移設当日は大混乱になります。
口頭での指示は難しくなりますので、マニュアルに詳細に記載しておいたほうが良いです。

移設業者との打ち合わせで、どのようなシールやダンボールを使うかがわかります。
表記などについて、マニュアルと一致させる必要があります。



・ユーザサポートの依頼

社内はITに詳しい人ばかりではありません。
デスクトップPCなど、つけはずしが苦手な人も多いです。

情シスだけでは手が足りなそうな場合は、ITに詳しい人に「見回り隊」的なことをやってもらう必要があります。
その調整を上司に依頼します。そいつがダメなら他部署の上司に直接頼みに行きます。



・移設先の確認

レイアウトが決まると、
移設業者から新オフィスの番地図のようなものが出てくるはずです。

新オフィスの各個人の席や、共有スペースの細かいところまで番号が振ってあります。
ダンボールなどには必ずその番地を書きます。行き場のない荷物をなくすためです。

上で作成した移設機器台帳の1つずつについて、行き先を確認します。

中小・中堅企業ならそれほど台数もないと思います。
面倒でも必ず移設機器台帳と突き合わせて、新旧の設置場所を確認したほうが良いです。

そうしないと、行き場のない機器が出てきたり、接続するLANボートが準備されていないような事態になります。

ここでは移設後の利用シーンを具体的に想像することが重要です。

サーバルーム

・移設作業範囲確認
・移設作業依頼(移設経路の養生含む)

総務・全体の移設業者との作業範囲の確認が必要です。

全体の移設業者は、机やパーティションといった什器の移動には詳しいですが、サーバやネットワーク周りについては疎いので、結局別のIT関連業者を呼んできます。
そうなると情シスがイチからネットワークなどの環境について説明しなければなりません。

またコストダウンの名の元に、什器と一緒のタイミングで移動することにされると、新オフィスでの搬入時間が読めなくなります。
サーバルームの機器類と各社員用PCの搬入が同時になり、大混乱になります。


サーバルームにあるものは机や棚、PBX(大抵サーバルームにあると思います)も含め全部、普段つきあいのあるネットワークの業者に持っていってもらう形が良いです。

物の種類ではなく、エリアで業者の守備範囲を決めるということです。


業者はネットワーク系に強みを持つ1社にまとめるべきです。
LANや電話の部分も頼めますし、ひとり情シスが業者間で伝書鳩をやる必要がなくなるからです。

移設経路の養生も必ずするよう依頼します。


前社では移転先が近いこともあり、夕方18時から作業開始し、その日のうちに搬入を終わらせました。
もし全体の移設業者に依頼していたとすると、搬入は2日後の朝でした。

作業は日付が変わるくらいまでかかったのですが、
サーバルームを先に終わらせることで、2日後の各個人のPCなどの搬入時には、集中して対応することができました。

精神衛生上も、この選択は間違っていなかったと思います。
移設費用が増えがちになりますので、ケチな上司には認めてもらえないかも知れませんが、その上に直訴してでも勝ち取るべきです。


・アンカー打ちの有無確認・工事依頼

HUBラック、サーバラックはアンカー打ちが必要になることもあります。

もちろん費用もかかりますし、そもそも移転先での工事が可能か、確認が必要です。



・ビル管理会社への作業可能時間の確認【新オフィス側】
・ビル管理会社への作業可能時間の確認【旧オフィス側】
・ビル管理会社への搬入経路の確認【新オフィス側】
・ビル管理会社への搬出経路の確認【旧オフィス側】
・ビル管理会社への作業申請【新オフィス側】
・ビル管理会社への作業申請【旧オフィス側】

大きなビルは詳細に申請する必要があります。

ビルが閉まる時間やエレベータを独占する時間があるので、ビル管理会社に相談します。

台車などでの移設になりますので、搬出・搬入経路の確認も必要です。
エレベータも業務用がないと、天井が低かったり、間口が狭い場合があります。
階段で上げるハメになるので、大きさなどを測っておきます。



・配置図を作る

頭の中でイメージしているだけでは、後で「モノが入らない」となります。
実際に設備・機器類を置いたシミュレーションをする必要があります。


わざわざCADなどの専用ソフトを使う必要はありません。

ダサいやり方ですが、私はExcelで実寸の50分の1で作りました。100分の1だと小さすぎたのです(笑)
ツールはPowerPointでも何でもいいと思います。入るかどうか分かればいいので。

サーバルーム配置図

左が移転前で、右が移転後です。

ラックは、前後にメンテ用の作業スペースが必要なので、要注意です。



次回に続きます。

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