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中途採用で入社すると、上司がすぐ辞めたり、
引継ぎどころかそもそも入社時に前任者が既に退職していたりします。
彼らもひとり情シスとしてそれなりに過酷な状況だったのでしょう。


ただ、彼らの残した大量の使えない資料や、作りかけの動かないツールなどを見ていると、無駄なことにエネルギーを使い、自らハマっているようにも見えます。

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そこに共通するのは、「思い込み」だと気づきました。
以下の思い込みを捨てる瞬間が、ひとり情シスには絶対に必要な気がします。

1.全部やらなければいけない

そもそも全部できると考えるのが傲慢なのです。
全部やろうとすると、すべてが中途半端になり、結局周りに迷惑をかけます。

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優先順位をつけて仕事をし、可能なら社外に振るべきです。

ラクをすることを考えます。サボるのとは違います。
サボるとは、社内の他の人に仕事を押し付けることです。
会社全体の仕事量としては変わっていません。

ラクをするとは自分の中で仕事を効率化することです。

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2.公平にやらなければいけない

神様ではないので、すべて公平にはできません。
コンピュータを扱うとはいえ、ひとり情シスは生身の人間で、感情もあります。

私はその感情は大事にしてよいと思っています。
えこひいきを積極的にして良いのです。

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但し、主観的な好き嫌いではなく、業務効率化の基準に照らして判断します。
えこひいきの延長線上に会社の業務効率化がある、という大義名分を持てなければなりません。
そうしないと、相手からの批判に反論できません。
感情論ではダメです。会社で感情を表に出すと、一気に説得力がなくなるのです。

判断の軸を正しく持つ必要があります。
すなわち勉強が必要だということです。

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3.他部署の業務を効率化しなければいけない

「情シスは業務部門をサポートするのが仕事だ!(キリッ)」とよく言われます。
本当にそうでしょうか?

ひとり情シスは自分のことで精一杯だと思います。
自分のことも満足にできないのに、他人を助けるようなど、傲慢な考え方と言えるでしょう。

まずは自分の仕事を効率化し、できた余裕で他部署の対応をすべきなのです。
自分の仕事の効率化が、全社的な効率化につながっているのです。

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4.完璧にやらなければいけない

学校の試験ではないので、100点満点には絶対にできません。

代わりにスピードで補います。
明日の8割より、今日の6割を目指すのです。

作った時間的余裕で、ブラッシュアップをします。
または他の大事な作業をすれば良いのです。

5.すぐに終わらなければならない

時間がないものはないのです。
そこまで放置していた人が悪いのです。
「困る!」などと言われても知りません。所詮他人事ですしw


ただ、やると決めたら、ガタガタ言わずとにかく着手します。

途方もない量の作業があっても、最初の一歩を踏み出す勇気を持つことが大事です。
1000件あっても、1日20件やれば、3ヶ月以内で終わります。


今まで散々放置していたものは、それなりに理由があります。いきなり劇的に改善することはないと思っているほうが良いです。
もし1%でも進められたら「今までよりマシだろ」と大いばりして良いのです。

0%と1%には大きな差があります。
1%進められたものは、10%まで進められる可能性があります。
10%まで行けば、30%、60%、90%まで行けるかもしれません。
片付くスピードが加速度的に上がっていくのです。

一度動き出したものは、勢いがつくのです。

6.正直でなければならない

嘘も方便です。駆け引きも必要です。

すぐにやる、簡単にできると言わず、スケジュール・費用に余裕を持って相手に伝えて良いのです。

えこひいきとの絡みもあると思います。
「こんな簡単なのサクッとできんだろ?」「なるはやで」と言われた瞬間に、優先順位を下げることです。

情シスの価値を下げようとする相手に、まともに対応する必要はありません。
他に優先すべき人がいくらでもいます。

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7.皆に好かれなければならない

皆に好かれるのは不可能です。

自分に協力してくれる(=会社の業務効率のことを考えてくれる)人に好かれれば良いのです。
社員から直接給料をもらっているわけではないのです。

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8.皆に理解されなければならない

上からも下からも、まんべんなく理解されることはありません。
特に上から理解されることを期待すると、そうならないときに大きく失望します。
最初から期待しないほうが良いです。

ひとり情シスはその名の通り、孤独です。
会社は数の論理なので、必然的に社内での立場も低くなります。
簡単に異動させられたり、とても情シスの範囲とは思えない業務まで兼務させられます。


そこで対抗措置として、社内システムを人質にします。
私の場合は、AccessやExcelマクロでツールをたくさん作って、ブラックボックス化させています。
インフラも押さえます。私のインフラの知識は20年前のものがベースですw

中小企業では、このくらいのレベルで十分人質にできます。
むしろ泥臭いところを押さえることのほうが大事です。手段は関係ないです。


ひとり情シスは自分がルールというくらいの気持ちで良いです。
大きなストレスに対応するには、強い意思が必要です。
変わり者と思われても仕方ないと私は思っています。

自分のことを分かろうとしてくれない人に、説明する必要はありません。

ブラックボックス化したはずのツールを他の手段に置き換えられてしまったら、
所詮自分にはその位の価値しかないのだと諦め、転職すれば良いのです。

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9.ITはハマるのが当たり前

仕事は順調に進めるのが当たり前です。

IT業界の考え方は異常です。だからITの格がいつまでも上がらないのです。
デスマーチなどプロジェクトの失敗はトラウマになってしまいます。次の一歩にためらいが出てしまいます。

社内調整の場だろうがベンダー相手だろうが、
費用対効果を無視した要件、必要最低限のところに予算をかけない、余裕の無いスケジュールなど、
ハマることを前提とした考え方には抵抗すべきです。


抵抗の仕方としては、
 ・積極的に協力しない
 ・抵抗勢力となる
 ・全部丸呑みしてブラックボックス化させる
などがありますが、できれば抵抗などせず、
情シスに事前に相談しておくと、仕事が順調に進む、と思わせたいところです・・・

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10.諦めるしかない

諦めてはいけません。

思考停止しないことです。思考停止したら終わりです。
1ミリでも進めるように、何らかの策を考えます。
1ミリ進んだことで、その後一気に状況が打開することもあります。


制約の中で考えるのが仕事なのです。

すべての制約がなくなることは永遠にありません。
「制約がなくなってからやる」というのは、「やらない」と言っているのと同じです。

本当に諦めたのなら、文句を言わず黙って仕事をするしかないのです。

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私も最初、これらの思い込みの罠にハマりそうになりました。
ほとんどが正論なので、これを捨てようとすると自己嫌悪に陥りました。


発想の転換ができたのは、前社で上司が突然辞めることになった時です。
転職してまだ半年で上司が辞めると聞き、しばらくは眠れない夜を過ごしましたが、
その後吹っ切れました。

それからは自分にできることをやりました。
そして、ひどいため息ばかりついている上司に付き合って残業するのをやめ、さっさと帰ることにしました。

その時、自分にできることをやろう、何か問題が起きても逃げずに受け止めよう、という覚悟をしたのだと思います。


その後も、ひとり情シスとして生き残るため、思い込みを捨てて仕事をしました。
社員のために尽くす模範的な情シスではないので、仲の良くない人もいました。「あいつは仕事をしていない」と役員に睨まれたりもしました。

でも決して全員に嫌われたわけではなく、むしろ人間関係にメリハリがついた気がします。
今までの会社で一番長く勤めました。

結局その会社を辞めましたが、今でもその会社の人と飲みます。
あるとき私が在籍していたときの感想を改めて聞いてみました。
自分では反感を持たれていたと思っていましたが、全く逆の評価でした。
「しっかりやっていた」という印象を持たれていたのです。

完璧を目指すのをやめたおかげで、かえって道が開けた、というのは皮肉だなと思っています。