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グレーゾーンへの対処が、社内SE生活を平穏に送れるかどうか、勝負の分かれ目だ。

インフラ、基幹、業務、雑務・・・あらゆるところにグレーゾーンが潜んでいる・・・

きっちり線引きされたキレイな仕事は、社内SEには少ないのだ。
グレーゾーンをうまく扱えなければ、ベンダーから社内SEに脱出したとしても、バラ色とはならない。

グレーゾーンとは

社内SEにおけるグレーゾーンとは、ベンダーと社内SEのどちらがやるべきか微妙な仕事のことだ。

システム連携、マスタ維持など、最も手が掛かる面倒な仕事であることがほとんどだ。
安請け合いすると、工数ばかり取られる。
社内SEに向いていない人は、安請け合いにより潰れる。そして逃げ出す。
グレーゾーンの作業が報われないのは、空気のように当たり前に行われる作業と思われていることだ。
作業をしていることすら意識されない。
そのため評価もされない。いわゆる貧乏くじだ。


システム導入時などには、グレーゾーンをどちらがやるか、ベンダーと社内SEが綱引きをする。
綱引きしていることにすら気づかず、一方的に押し付けられている社内SEも多いはずだ。

転職してグレーゾーン作業ばかり引き継がされるのが一番辛い。
きっと前任者の社内の立場が弱かったのだろう。
ベンダーにもナメられ、まんまとハメられたに違いない。

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綱引きの結果は、どちらに転んでもエンドユーザの業務には関係ない。上記のように作業が必要との意識すらないので、エンドユーザは社内SEの味方をしない。する必要が無い。
もちろん経営者もそうだ。他人事だ。社内SEの見えない工数についてのコスト意識など無い。とにかくカネがかからなければ良いのだ。

というわけで、多勢に無勢。綱引きに勝てることはほとんどない。グレーゾーンはほぼ100%社内SEの仕事となる。

グレーゾーンの生まれるとき

グレーゾーンは簡単に生まれる。

ベンダーは打ち合わせの場では、グレーゾーンを自分たちで担いそうな雰囲気を、経営者とか上の人間には見せる。

ベンダー:「何でもやりますよ!(有償でね♪)」
経営者 :「そうかそれは頼もしい!(当然無償だろ)」

有償なのか無償なのか、大変大きな問題なのだが、そのあたりを濁してお互い話す。
こうしてグレーゾーンが生まれる・・・
結果、全部社内SEの仕事になる・・・


本来は、ベンダーが
「後々このグレーゾーンが問題になります。この部分の費用も見ておいたほうが良いですよ」
と誠実に決裁者に伝えるべきなのだ。

でも受注したいベンダーは安い見積を作るために、まずグレーゾーンを削る。
どうせ社内SEに押し付ければいいこと」なのだ。

ベンダーはホント汚い。

経営者もアホだ。
社内SEに押し付けるのはいいが、それが会社のリスクになっていることに気づかないのだ。
いや、気づいているのだろうが、そのリスクを見てみぬふりをする。
「見えなければリスクは存在しない」とでも言わんばかりだ。

グレーゾーン例

当社のグレーゾーン例を挙げてみる。

・システム  :SFA
・グレーゾーン:基幹システムの取引先情報などとのマスタ同期作業

当初私はメイン担当ではなかったので、敢えてグレーゾーンを見ないフリをしていた。(見積段階から指摘すべきだったと後悔している)
それをいいことに、ベンダーは提案の初期から一切マスタ同期が必要なことは口にしなかった。

もちろんマスタ同期しなくてもシステムは使える。
だが使い始めれば、エンドユーザからマスタ同期のニーズが出ることは明白だ。
ベンダーも経験上絶対に知っているはずである。

ベンダーは経営者をまんまと丸め込み、受注が決まった。
遅ればせながらこちらからマスタ同期について指摘すると、ベンダーは苦笑いしながら「そこはお客様側(=社内SE)でお願いします」とぬけぬけと言い放った。時すでに遅し・・・


結局マスタ同期作業が必要になった。
週に1回、SFAと基幹システムからエクスポートしたデータをAccessで結合して、SFAに書き戻している。

これでSFAがうまく運用されている、と上から下まで皆思っているからおめでたい。
実際はハリボテである。

そのハリボテでかなり綱渡りをしている。
ベンダーは、「費用さえいただければ、基幹システムと簡単に同期できますよ!」とぬかしていたが、これだけの綱渡りを本当に簡単に実装できるのだろうか?
きっと中途半端な同期状態(社内SEが手作業で一部同期をしなければいけない形)でお茶を濁すのだろう。それでもベンダーは自己満足で「同期しています!」と言い切るのだろう。
そういう意味ではこちらで全て実装して正解だったかもしれない。


このベンダーは上層部とだけ会って、こちらの状況は一切聞こうとしない。グレーゾーン作業は無いことになっているのだろう。
このベンダーの営業方針を疑う。早く淘汰されて欲しい。

グレーゾーンを極力減らす

教科書的に言えば、社内SEの負荷増は会社にとってリスクだという認識で、社内が一枚岩になっていればグレーゾーンに対応できるはずなのだ。
社内SEの工数が膨らめば、他の案件の対応が遅れ、結局エンドユーザや経営者にその影響が及ぶからだ。

だが社内SEの会社内での立場は大抵弱い。というわけでグレーゾーンを無くすことはできない
そもそもグレーゾーンを担うのが社内SEの仕事だろう、という見方もあるだろう。


そうなるとグレーゾーンを最小化するよう努力するしかない。
グレーゾーン最小化はプロジェクト開始時が全てだ。「よくわからないややこしいところは社内SEの仕事」と既成事実にされたら終わりである。

ベンダーとの綱引きが始まってからでは遅いのだ。
綱引きの綱が出てくるところで機先を制する必要がある。審判の顔をして指摘するくらいで良いのだ。
プロジェクト開始時にグランドルールで明文化し、高らかに宣言したいところだ。
グランドルールは社内のメンバーに対するだけでなく、ベンダーへの牽制球でもある。

また「グレーゾーンの生まれるとき」に同席して、その発生を防ぐ必要もある。
ベンダーを制止できなければ、グレーゾーン回避は難しくなる。
不在時に話を進められてしまえば、ベンダーから「経営者から許可取りましたよ」と錦の御旗を押し立てられてしまう。

事前に社内打ち合わせをするなどして、社内SEと経営者が握れれば強いのだが・・・
そこの信頼関係を作るのが難しい・・・

グレーゾーン作業を涼しい顔でこなす

やむなく受けたグレーゾーン作業には、意地でも押しつぶされないようにしたい。
そのためにはプログラミングは必須だ。何でも手作業でやろうとするのは無理ゲーである。

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グレーゾーン作業を受けると決めたからには、涼しい顔でやることも重要だ。
同情は求めない。ため息をついたり、悲壮感も出さない。

厳しい状況でも解決策をひねり出すのが正社員の役目だし、そういうドロドロした部分の経験がベンダーSEとの差別化につながるのだ。
綺麗ごとしか言ったことのないベンダーSEは、絶対に社内SEに脱出できない。

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ため息をついたら負け
正社員の資格


グレーゾーン作業の苦労を引き受ける代わりに、自分の仕事が終わったらさっさと帰る。付き合い残業などしなくていい。
グレーゾーンを押し付けられた虚しさを考えると、このくらい当然だ。